「なあ・・・」

「ん・・・?」

彼はあたしの方を向いて
ちょっと照れくさそうにこう言った。


「名前で呼んでもいい・・・?」

「え、あ・・・うん」

それがあたしにも伝染してしまう。


何であたしが照れなきゃいきないの・・・!?

自分でも馬鹿馬鹿しくなってくる。



「咲綺・・・」

不意に名前を呼ばれそっちを向く。

名前を呼んだのは、彼でもなく
あたしのお母さんだった。


「お母さん・・・!?」

「あら、貴方・・・この前咲綺を運んでくれた・・・っ」


お母さんは彼の顔を目を丸くして見ている。

「こんにちは」
「元橋怜桜です」

「こんにちは、先日はどうも」

「いえ、俺は何も・・・」


そうか、彼はお母さんと会った事
あるんだよね・・・あたしのせいで。

「咲綺もちゃんとお礼言った?」
「お母さん、もう家に戻るからね」

「うん・・・」


そう言ってお母さんは病室を後にした。


「咲綺ーっ!!」

その声であたしは我に帰る。

「あ・・・」

「何ぼーっとしてんだよ?」

「別にー、てかいきなり呼び捨てすんの?」

あたしは意地悪っぽく聞いた。

「わりーのかよ?」

「別に・・・」


そして二人で笑い合った。