「咲綺───・・・」


我慢してた涙が溢れかえった
せいで目の前が滲んで見え難い。


「咲綺、ありがとう───・・・ッ」
「咲綺はもー十分、俺を支えてくれてるよ・・・」



怜桜はいつの間にか、あたしを
その腕で包み込んでいた。

あたしの肩なんかをすっぽり覆うくらい
大きな背中。

あたしはその背中に手を回した。


ねぇ、あたし・・・怜桜が居なかったら、
もうココに居なかったんだよ・・・?

怜桜に出逢えなかったら、きっと何も無い
人生のまま終わっていたんだろうな・・・。

お母さんの有り難味も判らないまま、
死んでいたんだと思う。



「怜桜・・・ありがとう・・・」

「ん、俺も、ありがとう・・・咲綺」



多分、怜桜のその傷は癒えてはいない
と思う。

だけど、あたしはそんな怜桜を
支えたい。

力になって、笑顔で過ごせる日を
待ちたい。


うぅん──・・・



ずっと待ってる────・・・。