「…部長。実は……」

興味を無くしたようなリョウスケはだるそうに高橋を見ている。

高橋は赤くなった目で私を見つめている。

…もう勘弁してよ。


「貯金が底をついてしまいました」

可愛い後輩はさらに私を見つめた。
その瞳は潤んでいて、今にもまた何かが零れだしそうだった。

「お願いします」

後輩は眉をよせ、口元を震わせる。
ここできっぱり否定すべきだった。
次にくる台詞はもう見えていたのだから。

「家においてもらえませんか」

どうして、ここまで追い詰められた後輩の必死の頼みを断ることができるだろう。
私は部長という地位を恨んだ。

リョウスケの手からカップが落ち、マットの上に柔らかく落ちた。