境界線




リョウスケの家は相変わらず綺麗に片付けられていた。白を基調にした清潔な雰囲気の部屋。まさに女が好みそうな部屋だ。

リョウスケの肩からソファに落とされた高橋は顔を歪めながら足首を押さえる。

「高橋。事情はゆっくり聞くから。リョウスケ。コーヒーかなんか入れてよ」
「…はいはい」

渋い顔をしてリョウスケが台所へ行く。

高橋の足首は少し腫れていた。

「湿布ならそっちの引き出しな」

リョウスケが手を動かしながら私に言う。相変わらず人の思考を読むのがうまい。

リョウスケに言われた通り、引き出しから湿布を出して高橋の足首に貼った。

「はいよ」

高橋と私の前にそれぞれコーヒーが置かれ、向かいのソファにリョウスケはどかっと腰を降ろした。

リョウスケは少し不機嫌そうにコーヒーを飲む。私は高橋の横に座った。

「…なんか、もう、本当にすいません」
「女に守られるなんて弱ぇ男だな」
「…すいません」

高橋の方を見もせずにリョウスケは冷たく言い放つ。高橋は普段私に怒られているときよりも萎縮している。