境界線




マキは驚きすぎて声も出ないのか、鬼のような形相で私を見た。私は気まずくなって目をそらす。

「それ、部長から襲ったってことですか」
「襲ったわけじゃない」

言い訳っぽく言うと、マキは五杯目のビールを注文しながら私に尋問を開始した。

「襲ってますよそれ、確実に」
「だから私ごぶさたって言ったでしょ」
「関係ありますか、それ」

「気持ちよくなっちゃったのよ。一回深いチューしたら」

私は昨晩の出来事を頭で思いだしながら、再び体が熱くなるのを感じた。

「そっからはもう私の方が止まんなくて」

普段通りの高橋と、欲情してる私。
傍から見たら、たぶん私が男を貪り食ってるようにしか見えなかったと思う。

「高橋も何も拒もうとしないしさ」



「…っ…ぶ、部長」

高橋は馬乗りになった私の手を握り、組み合わせるように繋いだ。私は口から荒く息を吐きながら、それに応える。