境界線


高橋がシャワーを浴びている間、私は部屋の中を物色してみることにした。

壁に添わすように積み重ねられた雑誌の山。表紙はどれも水着のアイドルばかりだ。

高橋も一応男なんだな、と当たり前のことに感心した。

一番上の雑誌を手にとりぱらぱらとめくってみる。ビキニ姿の可愛い子たちが色っぽいポーズで写る写真がページをめくるたびにあらわれる。

雑誌を元あった場所に置き、次は本棚をあさる。

そこには経済や政治に関する新書や専門書が多く並んでいた。高橋はこんなもの読むのか、と信じられない気持ちで見ていた。

「ぶ、部長!」

部屋中を見てまわる前に、ほかほかの高橋が私を止めた。

「あんま見ないでくださいよ」
「なんで?」
「恥ずかしいっす」

髪の先から水滴を垂らしたままの高橋は、その感情をはぐらかすように乱暴に髪を拭いた。

「水着のお姉さんに難しい専門書って、ほんと意味わからないね」
「もぉ、物色しすぎです」