校門へ向かう途中、学校の中にある自販機の前であることを思い出して立ち止まる。
「あ、中野ちょっと待って。」
「ん〜?」
前を歩いていた宮田さんと中野が振り返る。
僕は自販機を指差して中野を見て、嫌々ながらも
「ほら、約束だからおごるよ。」
と言った。
すると中野ははじめは不思議そうな顔をしていたが、思い出したのかすごい笑顔で僕に駆け寄り肩を組む。
「まあーじで?!うまくいったんだ?」
「いや、まあ、ちゃんと誘ったよ……。」
「やったなー!!!」
少しほ照った顔でうなずく僕に中野が僕よりも高いテンションで叫びはじめる。
おいてきぼりの宮田さんは驚いた顔で「え?なになに?」と言っているが、中野は僕に小さい声でひそひそと話す。
「で?夏祭りは2人で行くんだろ?」
「うん、まあ………。」
すると中野はまた声をいつもの大きさにして、僕の肩から腕を離すと軽く僕の頭を殴る。
「じゃあまだ早ぇよ!」
「は?何が?」
「おごるのは全部うまくいってからでいいってこと!」
「………はーい。」
僕が返事をすると、中野は満足げにうなずいて、また宮田さんのほうへ近寄る。
宮田さんは不思議そうな顔でこっちを見ていたが、中野が適当に流すだけでごまかしていた。
僕は宮田さんの様子が気になりながらも、来週のことが楽しみなような怖いような気持ちでいっぱいで、ふわふわした足取りで家に帰った。
「なあ、宮田。」
「……………ん?」
宮田は試合のあと、俺の家にいた。
宮田がうちに来るのは珍しいことではなくて、むしろ小学生のころなんかは毎日来ていた。
俺はそれを不思議に思ったことはなかったし、嫌に思ったこともない。
宮田は男とか女とか関係なく、だれよりも俺のことをわかっていてくれる存在で、近くにいて当たり前。
それに小学生ながら俺も、宮田の事情のことは薄々理解していた。
だけどそれでも、宮田が家に来る理由は俺と幼なじみだからだと、自分と宮田に言い聞かせて。
その宮田の様子が少しでもおかしければ、俺にはわかる。
女心とかそういうのはわからないけど、宮田の考えっていうのはだれの心の内よりも理解していた。
だから今。
俺の部屋の宮田の定位置。
部屋にあるバスケットボールを腕に抱えて、座り込んで漫画を読む宮田の様子がおかしいことは、今日の試合中に宮田を見つけたときから気づいていたのだ。
「なに?」
漫画から顔を上げることなくそう聞いてくる宮田を、俺はベッドの上でかいたあぐらに頬杖をついて見下ろしていた。


