一気に軽くなった身体をもてあますこと2日。
僕は中野の試合の応援に来ていた。
耳がおかしくなるくらいの部員たちや野次馬の応援の声に、床に叩きつけられるボールの音と、シューズがこすれる高い音が響く。
「ゆうちゃーん!!!!」
知った声が体育館に響くので、思わずきょろきょろと回りを見回す。
すると僕よりも少し後ろのところに、テニスのユニフォームを隠すようにジャージを上に来た宮田さんが立っていた。
「宮田さん!!」
うるさい中で声を上げ、気づいたらしい宮田さんに向かって手招きする。
宮田さんはいつもの思い切りで人込みをかきわけ、僕のもとまであっという間に近づいた。
「さすが。」
僕がそう言うと、うれしそうにピースサインをする。
「三宅くん久しぶりだね!元気にしてた?」
「ん、まあね。いろいろあったけど。」
笑いながらそう言ってまたコートのほうを見る僕をよそに、宮田さんは不思議そうな顔をして僕を見つめる。
「いろいろって……何かあったの?」
でも僕はそれにまた笑うだけで答えると、中野の名前を大声で叫んで応援した。
相変わらずありえないほどの体力でコートを走り続けた中野のおかげか、高沢学園は相手校と大差をつけて勝った。
中野が部員との反省会を終わらせるまで、僕と宮田さんは体育館の外で待っていた。
でもなぜか宮田さんはずっと黙り込んでぼーっと手すりにもたれてグランドを見つめるだけで、僕が話していても軽い相槌しか返ってこなかった。
僕も気まずくて思わず話すのをやめてしまって、今では沈黙だけが流れていて。
「だああ、あちぃよ〜。」
そう言いながら中野が体育館から出てきたときは、僕は弾かれたようにそっちを向いて、心底安心した。
「中野!お疲れ〜。」
僕が手を出すと、中野は思いっきりその手を叩いてハイタッチをする。
「相変わらず絶好調じゃん!」
「だろぉ〜?俺は夏に活躍するために生まれてきたからな!」
「はは!意味わかんないな、それ。」
「わかんなくねぇよ。夏生まれなのが何よりの証拠。」
「ああ、8月8日だっけ?確かに真夏だね。」
そう言ってからはたと気づいて、宮田さんのほうを見て微笑む。
「宮田さんも7月生まれだし、夏生まればっかだね。」
しかし宮田さんは僕たちの会話を薄く微笑んで見つめていただけで、僕の言葉に慌ててうなずく。
「あ、うん。そうだね。」
その反応にまた違和感を覚えるが、無理しているかのようにニコニコ微笑む宮田さんに、何も言えなくなる。
中野はさっさと歩きはじめてしまって、僕と宮田さんはそれについて行った。


