「…………………。」
き、気まずい………。
泪くんは何も言ってこないし、さっきから険しい顔で黙り込んじゃったし。
やっぱり私、何かしたのかな。
もしかしたら、私が泪くんのこと好きだって気づいちゃって、でもさよちゃんのことが好きだから泪くんは私の気持ちを断ろうとしてる?
うそ〜。
泣きそうになってきて、思わずうつむく。
「飯島。」
声をかけられるが、どっちみち良い結果じゃないことがわかっている以上、返事をする気になれない。
ゆっくり顔を上げて、最近少し高くなった泪くんの視線に合わせる。
さっきまでこっちを見てくれなかった泪くんが私の方をやっと見てくれたというのに、全然うれしくない。
「あの、さ…………」
ああ、それ以上言わないで。
言わなくていいから。
泪くんが言いにくそうに頭をかく。
お願い。言わないで。
「来週の土曜日、空いてる?」
「……………え?」
ま、まさか来週まで先のばしにしてくるとは思わなかった……
そう思って肩を落としていると、泪くんがまた口を開く。
「来週の土曜日の夏祭りなんだけど……
いっしょに行かない……?」
泪くんが、どこか照れたような、困ったような顔で私を見上げるように言う。
「…………………………!!!」
叫びたい!!!
えっと、今、ほんとに言ったよね。聞き間違いじゃないよね?
あああどうしよう。かわいい浴衣が家にあるといいんだけど。変な帯しかなかったらどうしよう!とにかくお母さんに探してもらわなきゃ。
一気に騒がしくなった心をなんとか静めて、ゆっくりうなずく。
「う、ん……お祭り、だよね?
行きたいな……。」
もう熱すぎる顔を隠すように、うつむきながらそう言う。
するとしばらく泪くんは黙り込んで長いため息をついたのが聞こえて、また変なことしたかなと思って顔を上げる。
すると泪くんは、髪がぐしゃぐしゃになるまで髪をかいて、子供みたいに無邪気な笑顔で笑う。
「はは!よかった〜。
すごい緊張したんだよね……。」
久しぶりに笑顔を見たからでもあるけど、その顔がほんとにかわいくて心臓が止まりそうになる。
そんなことは露知らず、泪くんは突然口を押さえて、しまった!という顔になると、あわてて自転車に乗る。
「と、とにかく来週の土曜日!
6時に家に迎えに行くから!
じゃあね!」
そうまくし立てて自転車を走らせて消える泪くんの背中をしばらく見つめた。
「…………………ふふ。」
思わず緩んだ頬をそのままに、私は軽い足取りで家に向かった。


