「んむむ〜ごめんなさい、ちょっと通して!よっと。」
宮田さんが人混みから飛び出すと、そのうしろから人混みよりも頭一つ背の高い中野も出てくる。
「三宅なんだよ急に……って飯島か。おはよ。」
「あ、おはよ。」
宮田さんは顔を上げて飯島と僕をしばらく交互に見てから、いつものように笑う。
「なっちゃん、おはよ。
なっちゃんやっぱり1位だったよ。」
「ほんと?よかった……。」
「飯島聞いてくれよ!俺すげぇ昇格したんだぜ!」
「ふふ、がんばったもんね。」
いつもと同じ飯島にまた少し安心していると、宮田さんが僕の横まで来る。
「ね、三宅くん。」
「ん?」
宮田さんは少しいたずらっぽい顔になって僕の顔を覗き込むと、ひそひそと言う。
「なっちゃんが心配で焦ってたの?」
「えぇ?」
意表をつかれて思わず後ずさるが、なんとか留まる。
「……まあ、心配ってほど大袈裟なことじゃないよ。」
「あんなに焦ってたのに?」
「………。」
顔が熱くなりそうなのを我慢して僕が黙ると、宮田さんは少し笑う。
「…………あのね、三宅くん。」
「……なんだよ。」
「今日さ、河原いかない?」
「え?」
予想していたのと全然ちがう言葉に思わず聞き返すと宮田さんは僕を真っすぐ見つめたまま微笑む。
「ね。行こうよ。カメラ持ってさ。」
「…………。」
「………だめ?」
女の子っていうのは、ほんとにわからない。
何を考えてるのかわかんないし、いつもにこにこするだけで顔からも考えが読めない。
いつか、わかるようになるのかな。
「……いいよ。じゃ、授業終わったら校門で待ってる。」
「うん!!」
相変わらず、うれしそうに笑うんだね。


