勢いよく帰っていくちさちゃんに着いて、みなみちゃんも教室を出る。
最後にあかねちゃんがにこにこと手を振って出て行った。
またしばらくの沈黙。
「……………………何だったの?今の。」
僕がやっと廊下のほうを指差してそう聞くと、宮田さんが肩をすくめて笑う。
「あの3人、2人のファンなんだよ。」
「ファン?」
「そ。ゆうちゃんは前から人気者だけど、三宅くんはこないだの球技大会からかなり人気出てるみたい。
知らなかった?」
僕が驚いて言葉を失っていると、いつの間にか机に頬杖をついていた中野が目だけで僕を見上げて言う。
「俺は知ってた。」
「うそ?」
「お前鈍感だな〜。」
中野がそう言って笑うのに顔をしかめて中野から視線を外すと、逆側に立っていた飯島さんが目につく。
飯島さんは口を少し開けてなぜか呆然としていて。
その飯島さんに声をかけようとしたところで、またドアが開く。
「お前らいつまで残ってんだー。
学校大好きだな。」
当番らしい田中先生が呆れたように腕を組んでいる。
それから田中先生は中野に目を向けて、持っていたらしいボールペンでビシッと中野を指す。
「おい中野!
お前毎回毎回再試に顔を出しやがって……いい加減一発合格しろ!」
「いや、俺は先生の数学の再試に出たいんだよ。」
「ゆうちゃん、それ意味わかんない。」
田中先生は宮田さんの突っ込みに何度もうなずき、さらに飯島さんに向かってにこにこと微笑む。
「飯島と宮田は心配いらないな。
こんな馬鹿とつるんでないで早く帰りなさい。」
「え?あ、はい。」
「はーい。」
「おーい、飯島。そこは否定してください。」
「へ?あ、ごめんね。」
飯島さんがそこでやっと中野の冗談に笑うのを確認して安心していると、田中先生の次の標的になる。
「三宅、前にも言ったが、お前には期待してるからな。」
「……どうも。」
「お前に『は』だってよ〜。
差別だよな、差別。」
「ゆうちゃんはしょうがないよ。」
「なんだと宮田。」
中野が宮田さんをにらむと、宮田さんはわざとらしくそっぽを向く。
僕がそれに笑っていると田中先生は満足したのか教室を出ていく。


