宮田さんはそんな僕を見て小さく笑ってから、また外の景色に視線を戻して、つづける。
「三宅くんはさ、本当に人のことをよく見てるよね。
今のだってそう。
ゆうちゃんのことを良く気にかけてるから、ゆうちゃんの性格が理解できてるわけだし、だからこそゆうちゃんの子供のときのことだって想像できるんだと思うの。」
なんだか照れ臭くなってきて、僕は椅子に座り直して宮田さんとは逆向きになって座る。
「あはは、また大袈裟。
中野は仲がいいからたまたまだよ。」
向かいの窓からは夕日に照らされた街が遠くまで見えて、きらきらと光るビルやマンションのガラス窓が妙に幻想的だった。
「ゆうちゃんと仲が良くてっていうのは事実だと思うけど……」
宮田さんは座席から降りて、僕の隣に同じように座り直す。
「でもさ、今日だってなっちゃんのことずっと気にかけてたでしょ?
迷惑にならない程度の心配をしてあげてた。
それもすてきなことだと思うな〜。」
答えられないでいる僕の顔を覗き込んでから、宮田さんはまた外へと目を戻す。
「私ね、中庭で三宅くんにはじめて会ったときよりも前から、三宅くんのこと知ってた。」
「え、そうなの?
中野から話聞いてたって話?」
思わず驚いて聞くと、宮田さんはまた僕のほうを見る。
「ちがうの。
はじめて三宅くんのこと知ったのは、ゆうちゃんから三宅くんの話聞く前。
去年の………夏ごろかな?」
思い出すように大きな目を上に向けて言う宮田さんに、僕は目を丸める。
「そんな前?うそでしょ?」
「あはは。うそじゃないよ。
気づかなかった?」
「あ、うん。全然……。
いつ?」
そう聞くと、宮田さんは自分のリュックを下ろして、中をあさりはじめる。
そして小さなかわいらしい黄色の布製のケースを取り出すと、そこからデジカメを出す。
「三宅くんは覚えてないと思うけどね…………
去年の夏の放課後にね、私、テニス部の練習が休みだったから、家の近くの河原に行ったの。
よく晴れてたから、良い写真が撮れるかな〜と思って。」
デジカメの中の写真をディスプレイで次々と見ながら、宮田さんは話しはじめる。


