「だってさ、その言い分で言ったらだよ?
『もしかしたら』、三宅はお前のことが好きなの『かも』しれねぇだろ?」
「それは………だって、さよちゃんと泪くんが仲良しなのは確かだもん。
それに比べたら私の可能性なんて……」
「ないって言いきれるのかよ。」
「……………。」
中野くんの言いたいことはわかる。
確かに私にだって可能性はあるけど、それは少ない。
さよちゃんは私にとって大切な友達だし、そのさよちゃんが泪くんのことを好きなんだったら、応援したい。
私だって、好きだけど。
中野くんは私が黙り込むのを見て、またため息をつくとゆっくりと話しはじめる。
「あのな、もしお前の言うとおりで、宮田と三宅が両思いだったとしてもさ。
奪ってやればいいだけじゃん。」
「そ、そんなこと……」
「できないと思ってんの?
そんなこと言ってたらお前いつまでも恋愛なんてできないぞ?」
中野くんの少し強めの口調に思わず言葉を引っ込める。
中野くんの目は本当にまっすぐで、思わず真剣に聞いてしまう。
「お前は三宅が好きなんだろ?
三宅のどこが好きなんだよ。」
「えっ……と……優しいし、話してて楽しくて……」
「そう思ってるのはお前だけなわけないだろ。
いつだって自分が好きなやつの良さをわかっているのは自分だけじゃない。
じゃあいつだってライバルがいるってことだ。そうだろ?」
あまりの正論に思わずうなずく。
中野くんは少し顔を明るくして、いつもみたいにいたずらっぽく笑う。
「ライバルばっかりなのが恋愛。
両思いになりたかったら、ライバルからそいつを奪うしかない。
奪ってやるって気持ちがないかぎり、恋愛なんてやっていけねぇんだよ。」
私はしばらくそう言う中野くんを見つめて、少しうつむく。
「……私にできるのかな。」
「じゃあ三宅をあきらめるか?」
「それは………嫌、かな。」
「よし!!その意気だ!」
ガッツポーズを作って言う中野くんに笑ってから、私は遠くに見える観覧車を見上げた。
「………そうだね。
がんばってみようかな。」


