「ね、あとで観覧車乗ろうね。」
「え?ああ、いいよ。」
「やった。じゃ、約束ね。」
そう言って中野のほうへ行く宮田さんを見送って、僕はもう一度あの恐ろしいレールを見る。
「………………平気だよな?あれくらい……」
僕はそう自分に言い聞かせ、3人のもとへと歩いて行った。
世界があんなに景色を変えるとは思わなかった。
一瞬だったんだ。
ほんとに、一瞬。
一番高いところまで登りきって、死ぬと思った。
あんな高さから落ちたら普通死ぬ。
「だーかーらー、言ったじゃん!」
宮田さんはひざに手をついてうつむく中野の背中をたたきながらそう言った。
僕は震えそうなひざに勝をいれてその様子をながめていた。
「ジェットコースターに乗るってのにホットドック3つも食う馬鹿がいるかな普通。」
あきれてそう言うと、中野がうつむいたまま低くうめく。
「う、うるせぇよ。
あー、まじ出さなかっただけ俺すげぇ………。」
「やーだあ、もう!汚いこと言わないで!」
宮田さんはもう一度容赦なく中野の背中をはたくと、僕と飯島さんのもとへ歩いてくる。
「もうゆうちゃんのことは放っておいて、どれか別のやつ乗りに行こ!」
「えぇ?放置しちゃうの?」
「ああいうのは自業自得って言うの!」
「きーびしーなあ〜。
じゃあ今の中野でも平気そうな乗り物に………」
僕はほんとに呆れているらしい宮田さんの顔に笑ってから、ふと気づく。
「あ。じゃあ観覧車乗る?」
宮田さんはそれに一瞬驚いた顔をしてから、本当にうれしそうに微笑んで勢いよくうなずく。
「うんっ!
じゃあさっそく行こーう!」
しかしそこで、後ろでまだうつむいていた中野が震えながら起き上がる。
「ちょ、ちょい待ち……。
俺、今は観覧車も無理かも……おぇ。」
「えぇー!でも今が一番夕日がきれいに……」
心底落ち込んだ顔でうつむく宮田さんに僕が声をかけようとすると……
「あの、私、観覧車苦手なの。」
突然そう言い出す飯島さんに僕と宮田さんが驚いていると、飯島さんがゆっくり笑う。
「だからね、私が中野くんのこと見て待ってるから、2人は観覧車乗ってきていいよ。」
『いいの?』
口をそろえて聞く僕と宮田さんに飯島さんは小さく笑う。
「うん。だから、行ってきて。
ここのベンチで待ってるから。」
そう言う飯島さんにお礼を言うと、
「じゃ、行こ。約束だしね。」
と、僕は宮田さんのほうを振り向いて歩きだす。
宮田さんも、
「うん!なっちゃん、ありがとう!」
と飯島さんに手を振って、僕のあとを追った。


