「素敵な曲だね。」



最近よく聞く声が聞こえて、振り向く。



「よ。」

軽く手を振って教室のドアのところに立つ宮田さんに、微笑む。




「ゆうちゃんとなっちゃん、下で待ってるよ。」


そう言いながら、宮田さんはベランダへの入口のところから顔を出した。

僕はそれにうなずいてから、また柵へあごをのせる。



「………わかった。
でも、あと少しだけ。」



そう言う僕に、宮田さんが小さく笑うのが聞こえる。

ベランダに降りる足音が聞こえたかと思うと、宮田さんは僕の隣に並んで、柵の下に足をかけて少し乗り出す。



「じゃあ、私も。」



シャワールームに行ってきたのか、宮田さんから少しシャンプーの香りがする。


なんだか心地が良くて。

疲れてベッドで眠る前のような包み込むような幸せが満ちていて。






「…………〜♪

『きっと君は知らない

この世界の大きさも

あの太陽の熱さも

そして

君を想う僕の今も』


あー…………。
続き忘れちゃったな。」


「あははは。」




オレンジ色の太陽がきれいだ。

いつもなら写真を撮るんだけど。



今はそんな気分になれなかった。





「……球技大会、楽しかったね。」

「うん。執行委員お疲れ。」

「あはは。ありがと。」

「明後日はジェットコースター。」

「楽しみだね。」

「うん。」

「観覧車も乗りたいな。」

「うん。」

「疲れたね。」

「うん。」

「なんか言ってよ。」

「…腹減ったなあ…。」

「……………ラーメン食べに行く?」

「いいね。じゃあ、4人で行くか。」

「そうしよ。」

「……もしかして今は下で中野と飯島さん2人きり?」

「うん。」

「…いろいろ大丈夫かな。」

「あはは。
ゆうちゃんがいつものテンションで絡んでたから、きっと大丈夫だよ。」

「むしろ心配。」

「あははは。」

「早く行かなきゃ。」

「そうだね。」

「行かないの?」

「そっちこそ。」

「………もう少し。」


「うん。」







僕にはまだあの歌の気持ちはわからないけど。

そんなふうに誰かを想い続けられるときがくるとしたら。




それは素敵なことだと思う。







夕日が沈むのはまだまだなようで、ちょうど地平線に座っているような太陽が、ほてったその顔の輝きでグランドを照らしていた。