「できたー!!!」

「お?まじ?やったじゃん!」


横で背伸びするように両腕を伸ばして喜ぶ宮田さんに、僕はガッツポーズを作った。


宮田さんがパソコン室に通うようになって5日。

球技大会のプリント作成の期限が明後日というところで、やっと完成したのだ。


「やったー!すごい達成感!
いえーい!」

ハイタッチを求めてくる宮田さんに思わず笑って、ハイタッチをする。



どうやらこのプリントは5日後に中等部全体に配るためのプリントだったようで、球技大会当日の進行や、この前のアンケート結果による全校生徒の球技割り振りやら、すごい量だった。


完成したらしい原稿の画面をマウスでスクロールしながら、僕は心から感心した。


「まじですごいな!
こういうの得意なの?」

「なんか写真撮るときもそうだけど、レイアウトみたいなの考えるのは好きなんだー。」

「あーわかる!
すごい見やすいよ。」

「ほんと?いえーい!」


宮田さんはほんとにうれしいみたいで、にこにこと機嫌良さそうに微笑みながら印刷のボタンをクリックすると、パソコン室の中のコピー機へと歩いていく。


その足取りがほんとに軽いのでまた僕は笑い、手に持っていたシナリオノートへと視線を戻した。


コピー機から流れ出てくるプリントを受け取りながら、僕のほうを振り向いて宮田さんが聞く。



「次のシナリオはどんなのにしたの?」

「あー今のところは青春?的な?」

「おぉ〜いいねー!冒頭のとこだけでいいから、読んでみてよ。」

「えぇ?恥ずかしいなあ。」

「いいじゃーん。ほらほら。」

「はいはい。ったく………」


僕はノートをぺらぺらとめくって、いま書いてるシナリオの冒頭を探す。

そしてそのページを探し出すと、ひとつわざとらしく咳ばらいをする。

それに宮田さんが笑い、僕は静かに話した。



『海、空、夏。

どんなドラマにも出てくるような、ありきたりな青春っていうのは嫌いだった。

だけど、あの日の僕たちにとって、15の僕たちの舞台にとって、かけがえのないキャスティングだったんだ。

たとえ何十年経って、他人や、自分に、青臭い青春だと恥ずかしがられたとしても。

それでも僕は、長い人生の中で燦然と輝く青春を、忘れることはないだろう。』