「な、なに?」

あまりの勢いにそう聞くと、宮田さんはいたずらっぽい顔になって肘で僕をつつく。



「男前じゃーん!!」

「はあ?何、そのテンション。」

「いやいや、今のは良かった!」

「なに?わけわかんないー。」


そんなことを言われるとなんだか自分の行動がキザっぽく思えてきて、なんだか恥ずかしくなる。

その僕を見てさらに宮田さんはうれしそうに笑い、軽い足取りで僕より少し前を歩いていく。


「三宅くんは優しいんだよね。」

「あーもう、やめて。」

「照れてる?」

「うるさいよ。」

「あはははは。」


職員室にプリントとカギを届け、僕らはまたいっしょに家まで帰った。



その道中も宮田さんは僕が優しいとかなんだとか言うもんだから、僕は身体中がぞわぞわしてたまらなかった。


しかし突然、宮田さんが話題を変える。



「そういえばさ、なっちゃんは三宅くんのこと『泪くん』って呼ぶんだね。」

「ああ、そうなんだよ。」

「仲良しなの?」

「んーどうなのかな。」


自転車を引きながら、少し空を仰ぐ。



「うーん。
仲良しって言うか、去年から同じクラスだし、なんだかんだで話すことがよくあって………

お互いに波長が合うんだよ。」


それに宮田さんが納得したような顔をしていると、

「みやけー!!」

後ろからまた中野の声がして、振り向く。


するとやっぱり自転車をこいでこっちへ近寄ってくる中野がいて。

「お!宮田もいんじゃん!」

「おす!」

中野が声をかけると、そんな掛け声とともに宮田さんが片手を上げる。

中野は僕らのもとに来ると自転車を降りて、僕の横に並ぶ。


「お前らいっしょなんだ。」

「そ。最近宮田さんが執行委員の仕事でパソコン室に来てんの。

それより、今日は部活終わんの早いんだ。」

「ああ、さすがに新学期から飛ばしすぎだしな。」


そこまで話したとこで、宮田さんが中野のもとへ駆けて、

「えいっ!」

と声を上げて中野が引いている自転車に飛び乗る。


「うぉわ!!」

バランスを崩しつつ中野が自転車を支えると、宮田さんは自転車にちょこんと座って中野に内緒話をするように顔を近づける。


「ゆうちゃん、今日ね、三宅くんったらすごく男前な………」

「おいおいおいおい。」


しっかりこっちにも聞こえるような声で言う宮田さんに突っ込むが、中野はもう止まらない。


「え?なに?うちのるいちゃんが何か………」

「なーかーのー!!!」

「あはははは!」


結局宮田さんに押し切られて中野にも知れ渡った今日のエピソードのおかげで、僕は寝る前まで恥ずかしい思いをすることになった。