飯島さんの言葉に納得してうなずいていると、宮田さんが飯島さんへと駆け寄る。


「なっちゃん今日は遅いんだね。」

「あ、うん。
今日の球技大会のアンケートの集計とか、いろいろあって……」

「集計やってくれたんだ。
ありがとう!」

「ううん、いいの………」


2人の会話をしばらくながめ、ああ、と納得する。

飯島さんの名前は、たしか夏美だったっけ。

だからなっちゃんか。



そこで、飯島さんが手に大量のプリントを持っているのが目につく。


「あ、飯島さん、そのプリントなに?」

「え?あ、田中先生に頼まれて、教頭先生のところに持っていくの。」

「は?教頭先生って職員室にいるじゃん。
なんで田中先生が持ってかないの?」

「あ、田中先生は教室に仕事があるみたいで、それで………」

「ふーん。学級委員大変だね。」


ずっと穏やかに微笑んで説明する飯島さんを、もう一度見つめる。

飯島さんは身長は低いほうではないけど、その身体はとても細い。

腕も足も、すらっとしていた。



僕は鞄を担ぎ直して飯島さんに近寄って、プリントの山をひょいと受け取る。

「え………」

「おっも!こんなの持ってたの?
無理しないほうがいいよ。」


呆気にとられたように僕を見上げる飯島さんに、微笑む。


「僕もパソコン室のカギを職員室に返さなきゃなんだよ。
どうせ行くんだから、持ってく。」


それにめずらしく飯島さんがびっくりた顔になるので、少し笑う。

「え、いいの?」

「いいって、いいって。
てか飯島さんって歩きで通ってる?」

「え?あ、えと、ううん。
今日はお父さんが迎えに来てくれるの。」

「そか、ならよかった。
もう暗いし早く帰ったほうがいいよ。」


僕がそう言うと、飯島さんはまた静かに微笑む。


「…………ありがと。
じゃあ、頼んじゃうね。」

「ん。じゃ、気をつけてね。」

「うん。
じゃあ、さよちゃんも、ばいばい。」

「あ、ばいばい!」


少し手を振って教室のほうへ歩いていく飯島さんに宮田さんは手を振ると、僕のほうを勢いよく振り向く。