「あれ………?」
続きを口ずさもうとして、止まる。
歌詞が思い出せない。
そういえば、この歌の続きの歌詞をいつも忘れてしまう。
また調べないと、と思うけど、いつもそれすら忘れてしまっているし、この前調べようと思ったが、だれが歌っているのかも、題名も知らない。
メロディーは思い出せるんだけど。
「はあ…………中途半端だな……何もかも……。」
今はひどくナーバスだ。
何もかもうまくいかない気がして。
でも。
「…………会いに行かないと…始まんないよね…。」
ため息混じりにそうつぶやいて、意を決して立ち上がる。
川から上がって脱いでいたサンダルをはいて顔を上げたところで。
「あ………………」
見上げた先の、コンクリートの堤防の下。
草原になっている河原を、まさかの人影がこっちを見て立っていて。
「………………飯島……?」
白いノースリーブのブラウスとピンクのスカートを着た飯島が、少し遠慮するように肩にかけたかばんを握りしめて立っていた。
今日は眼鏡をしていたけど、夏祭りと同じような気持ちになる。
飯島は僕に名前を呼ばれて一度うつむくと、すぐに顔を上げて赤い微笑みを浮かべた。
「………中野くんに、ここに泪くんがいるって聞いたの。」
「中野が?あいつ………超能力者かな。」
呆れたように笑う僕に、表情の固かった飯島もやっと顔をほころばせる。
僕と飯島はまた川に足をつけて河原に並んで座っていた。
照りつづける太陽は相変わらず暑いけど、川の冷たさが本当に気持ち良くて、じわりと顔ににじむ汗も悪くない。
「私もびっくりしたの。家を出ようと思ったところで、うちに電話がかかってきて……
『三宅なら河原だから。』って。」
中野の無愛想な口調を真似して言う飯島に、思わず吹き出して笑う僕に飯島もつられて笑う。
ひとしきり笑って、額にたまった汗をぬぐいながら飯島を見る。
「はは、あ〜…。
でもさ、どっか行くとこだったんでしょ?ここにいて大丈夫?」
すると飯島は困ったような、気まずいような顔になってうつむく。
飯島がスカートを握るのが見えて不思議に思っていると、飯島が緊張した様子でうつむいたまま小さく言う。
「泪くんの家に………」
「……?」
顔を上げた飯島が、強張った顔で僕を見上げる。
「ちゃんと………ちゃんと返事しようと思って……泪くんのとこに行くところだったの。」


