僕らのシナリオ








アスファルトから照り返す熱にじわじわと汗をかきながら、どこに向かうでもなく道を歩く。



決心?


したよ、しましたとも。


でもどのタイミングで?

どのタイミングで飯島に答えを聞けば良い?


飯島の家にわざわざ行く?
それは怪しすぎやしないだろうか。

電話で聞く?
それは次に会ったときに気まずい可能性がある。

家で待つ?
ありえない。



ああ、そもそも『好きです』よりも『付き合ってくれ』なら返事も聞きやすかったんだ。

なんであんな言い方をしてしまったのか………


台詞を考えるのは得意なはずだろ?
なんでもっとまともな言葉が思い浮かばないんだよ。


あー純愛のシナリオを諦めずに書いていれば、かっこいい台詞の一つや二つ思い浮かんだのかもしれない。



馬鹿だ。





「…………はあ。ここに来てどうするんだよ………」


そんなことを悶々と考えている間に、いつもの河原にたどり着いてしまった。

この河原は中野の家から飯島の家まで行くのとは、全く正反対の方向。



結局は、逃げてしまった。




「……………。」


このまま引き返しても、アイデアが浮かばないかぎりはしょうがないし、僕はしばらくここで過ごすことにした。


慣れた足取りで堤防を降りると、草原になっているのとは別の砂利のところに、小さく石が積み上がっていて。

その石の真ん中に、白い斑点と、その周りに焦げた跡がある。



「………花火、かな。」


どうやらだれかがここで花火をやったらしい。


花火か。

久しぶりにやりたいな。



じりじりと照る太陽はさすがの河原でも暑いのだが、きらきら光る水と、太陽を求めて生き生きと伸びる緑の草たちが、とてもきれいで。


僕は適当な川岸に座って足を水につけると、両手で四角を作って右目に当てる。



ああ、こんなに良い景色なら、カメラを持ってくるべきだったのに。



今日は、ツイてない。





手を離して後ろに手をついて、足を水の中でぶらぶらさせながら頭の中に文章を描いていく。


この景色を表す言葉。

歌のようにテンポを刻むパラグラフ。




歌、ね。




「…………『きっと君は知らない

この世界の広さも

あの太陽の熱さも

宇宙の広さも

そして

君を想う僕の今を』…………」



いつも思わず口ずさんでしまっているけど、今日はいつもとはちがう気持ちになった。


歌うだけで、心がうなる。




そうだ。

この歌詞が、今の僕にはぴったりだから。



今の僕は、空回り。


一人で焦って一人で困って。

一人で悩んでいる。



きっと飯島は、そんなこと知らないんだろうな。