「…………暑い……。」
僕は照り付けるありえない強さの太陽を手の平を傘にして見上げ、思わずそうつぶやいた。
相変わらずのTシャツと短パン。
この暑さに思わずTシャツを脱ぎ捨てたくなる。
サンダルを引きずって歩く先は、中野の家だ。
インターホンを押すと、もう慣れた様子でおばさんがドアを開け、僕を迎え入れてくれた。
「こんにちは〜、三宅くん。
さ、入って入って。」
「失礼します。」
おばさんに礼をして家に上がり、もう自分の家のように知っている家の中を歩いて階段を上る。
階段を上がって右。
突き当たりの部屋が、中野の部屋だ。
「……………はあ。」
部屋を開けた途端、足元を冷気が駆け抜けた。
冷房が効いていて、最高に気持ち良い状態。
その部屋の隅にあるベッドの上には、どうしたらそんなにもグシャグシャになるのかわからないほどの状態で隅に追いやられたブランケットを、これでもかと蹴飛ばした中野が俯せで寝ていた。
この前の試合で部活も一段落した中野は、今日から本格的な夏休み。
暇なときは遊びに来い、という中野の家に約束もなしに行くのは毎度のことで、今日もなんの約束もなかったのだが………
「………………。」
それにしても、だらしない。
時間は午前11時。
寝坊にもほどがある。
僕は冷気を逃がさないようにすぐにドアを閉めると、後ろのポケットに無理矢理入れていた汗をかいたペットボトルのジュースを取り出す。
ベッドの側まで近よって、ペットボトルを持った右手を中野の頭から50cmくらいのところに持ち上げて。
離す。
「いってぇ!!!」
「おはよ、中野。」
僕は中野のベッドに座ると、近くに落ちていた漫画を拾って読みはじめた。
「いて〜。お前、正気?角が当たったぞ?角が!」
「…………。」
「これで脳細胞大量に死んだ。馬鹿になった。お前のせいだからな。」
「手遅れだろ。」
「はあ?喧嘩売ってんの?」
後ろからうるさく騒ぐ中野に、僕はため息をついて振り向く。
「約束どおり奢ってやるんだから、いいでしょ。」
「約束………?」
中野は頭をさすりながらキョトンとするが、すぐに僕の頭をはたく。
「いった……」
「まじか!!うまくいったわけ?!」
「いや………ん〜……まあ……?」
「あ?はっきりしねぇな。」
中野は目を細めてそう言うと、ペットボトルのフタを開けながら、
「どういうこと?」
と聞く。
僕は漫画を閉じて天井を見上げてから、ゆっくりと言葉を選んだ。


