俺は宮田の腕を掴んだまま、いつもの河原に来ていた。
堤防の上で宮田の腕を離すと、ひょいひょいとコンクリートの堤防を下って河原に降りる。
「ほら、来いよ。」
まだ堤防の上で立っていた宮田のほうを見上げてそう言うと、辺りを見回して適当な石を探し、いくつか積み上げてポケットから取り出したろうそくを立てた。
その間に降りてきた宮田が、しゃがみ込む俺の隣に立つ。
俺は持ってきていたビニールの袋から大きな花火のセットを取り出した。
「……何してるの?」
「あ?見てわかるだろ。花火。」
「花火?」
「そ。つーか、お前早くりんご飴食えよ!溶けちまうぞ。」
大人しくりんご飴に口をつける宮田に俺は笑って、花火の袋を破いて中身を取り出しはじめる。
宮田は俺の隣にしゃがむと、りんご飴を食べながら何か言いたそうにした。
「ゆうちゃん……」
「やっぱ線香花火は最後だよな〜。」
「ねぇ。」
「うぉ、打ち上げ花火もあるじゃん!やっぱこれ選んで正解だな!」
「………ゆうちゃ…」
「黙れよ。」
思わず低い声で言うと、宮田が驚いた顔で言葉を失って俺を見ていて。
俺は一度ため息をついて打ち上げ花火を置くと、宮田のほうを見ないまま口を開く。
「………何も言うなよ。」
「……え?」
「今のお前には……下手な慰めとか、アドバイスとか、必要ねぇんだよ。」
「…………。」
「今は………悲しいだろ?」
視界の端で宮田がうつむくのがわかって、俺は側に出していた花火の中から、二本取り出す。
「悲しいときは悲しいのを思いっきり味わうのが一番なんだよ。」
「………。」
「泣いたり叫んだり、やり方はいろいろあるだろうけどさ。」
そこで俺は、取り出していた花火のうちの一本を宮田にわたし、できるだけ明るい声で言う。
「で、今日のお前には、りんご飴と花火。
思いっきり泣いて思いっきり騒げ。俺とお前の仲なんだから、どんだけでも付き合うよ。」
そう言って俺は花火を宮田に押し付け、ろうそくに火をつけると自分の花火に点火する。
「うぉ、これ意外とすげぇな!」
「………。」
宮田はしばらく自分の花火を見つめて、ゆっくりとろうそくの火に花火を当てる。
勢いよく放たれる色鮮やかな花火に俺が笑いながら興奮していると、宮田もゆっくり微笑んだ。
「……ほんと、きれいだね。」
「だろ?」
「花火、久しぶり。」
「そうだよな。」
「ゆうちゃん。」
「ん。」
「お礼。」
「あ?って、あっちい!!!」
「あはは!」
「このやろ……」
「わわっ、やめてよ〜。」
俺たちは夜遅くまで花火で遊んだ。
宮田はずっと、泣きながら笑っていた。


