またため息をついて、僕は振り向いていた体勢から、飯島に正面から向かい合うように立つ。
「………中野は、なんて?」
僕が聞くと、飯島はまた少しうつむいて、握っていた金魚の袋を見つめる。
「……もう少しだけ、待ってくれ、って言われたの。」
「………………。」
「もう少しだけ、あいつのこと待ってやってくれ、って………」
「………………。」
「……………でもね。」
少し声色の変わった飯島に、僕は目を見開く。
飯島は一度うつむいて金魚の袋を強く握りしめると、すぐに、少し眉をよせて、緊張したような、強張ったような顔で僕を見上げた。
「でも……………私、待てない……かも………」
「………え?」
近くにある街灯のまわりを、虫が音もなく飛んでいる。
街灯の明かりを右から浴びる飯島の顔が、オレンジ色に照らされて、より凜として見える。
「泪くん…………あのね……」
飯島が唇を噛み締めるのを見て、僕も手を握りしめる。
飯島は、何を言おうとしているのか。
考えようとしても、他の言葉が僕の頭を埋めていく。
他の決意が、僕の喉まで押し寄せる。
もっと、かっこいい台詞。
考えられないのかな、僕は。
「私ね……」
「飯島。」
言葉を遮った僕に、飯島が不思議そうにゆっくり瞬きをする。
ああ、飯島、ごめん。
こんな馬鹿な男で、ごめんね。
口が、勝手に。
「好きだよ。」
驚いた顔の飯島を、真っすぐに見つめて。
「僕は、飯島のことが好きだ。」
でも、後悔はしなかった。


