「あ〜食べすぎた。」
「ふふ、ほんといっぱい食べたからね。」
僕たちは夏祭りの賑わいから抜けて、静かな通りをゆっくりと歩いていた。
僕は右手に赤と青の水風船を持っていて、飯島は左手に金魚の袋を持っている。
腕時計を見ると、今は夜の8時。
そろそろ飯島を送っていかないといけない時間だ。
「……………。」
それに少し、いや、とても寂しくなる。
もう少しいっしょにいたいし、もっといっぱい話がしたい。
でも僕らはまだ中学生の子供で、親だって心配する。
「どうしたの?」
飯島が心配そうに僕の顔を覗き込んでくるので、僕は一度飯島の目を見つめてから、すぐに視線を落とす。
「…………もう遅いし、送ってくよ。」
飯島もそれに少しうつむいて、黙ったままうなずいた。
ただ何も話すことなく、ゆっくりと歩いた。
飯島の下駄の音と、僕のサンダルが地面に擦れる音だけが響いて、さっきまで遠くに聞こえていた祭の賑わいも、いまは全く聞こえない。
「…………あっという間だったね。」
「……ん。」
静寂を破った飯島の言葉に、僕はぼんやりとうなずく。
「でも、今日お祭り行ってよかった。」
「………。」
「すごく……楽しかったよ。」
「……よかった。」
そこで突然飯島が立ち止まる。
数歩進んだところで僕も立ち止まり振り向いて飯島を見ると、飯島はうつむいて黙り込んでしまっていた。
「………………どうしたの?」
僕がそう聞くと、飯島はしばらく黙り込んでから僕のほうを見上げた。
「………私………最近、泪くんに嫌われちゃったかと思ってたの。」
「え?」
少し目を見開いて飯島を見て、そんなことない、と言おうとするけど、貝殻を渡したあとの僕の行動とか、飯島を避けてたときとかを思い出して思わず黙る。
飯島がそんなふうに、悩んでいたとは思わなかった。
不謹慎だけど、少し、うれしい。
「…………………それで……………不安になって……この前中野くんに、相談したの。」
「え?そうなの?それって……」
「……先週の火曜日、かな。」
僕はため息をついた。
まさかの、僕が相談に行った前の日だ。
中野はそれを知っていて僕の相談に乗っていたのかと思うと、あとで殴ってやろうと決めた。


