「わっ。また破けた………。」
「あはは、意外と不器用なんだ。」
かれこれ金魚すくいの前で盛り上がること10分。
飯島はどうしても黒の出目金が取りたいようで、もう3度目になった挑戦に失敗したところだった。
穴が開いてただのプラスチックのと成り果てた輪を悔しげに見つめる飯島に、僕は笑ってから、
「ほら、見てて。」
と言うと僕は近くを泳いでいた黒の出目金をひょいとすくう。
「上のほうにいるやつを狙うんだよ。すくうときはなるべく水と平行になるように入れて、斜めに抜く。で………」
そこで飯島を見ると、飯島は驚いた顔で僕のことを目を輝かせて見つめていた。
僕が言葉を止めて飯島を見ていると、それに気づいたように飯島が慌てて手を横に振る。
「あ、ごめんね!でも泪くんがすごく上手だから、びっくりしちゃって………」
「はは。僕は小さいころから金魚欲しがってたさくらによく金魚すくいやってあげてたからね。慣れたんだよ。」
「そうなんだ……。良いお兄ちゃんだね。」
「そ?普通だよ。」
僕は飯島から目を離して、適当な金魚をすくうと屋台のおじさんに声をかける。
「じゃあ、この子のすくった金魚と、この出目金とこの金魚だけ袋に入れてください。」
「はいよー。」
おじさんは手慣れた様子で手早く3匹の金魚を袋に入れてくれた。
僕はおじさんに軽くお礼を言って袋を受け取ると、飯島を立ち上がらせて袋をわたす。
「はい。」
「え?いいの?」
「いいの。今日付き合ってくれたお礼。」
「………ありがとう。」
飯島はうれしそうに袋の中で泳ぐ金魚を見つめ、笑う。
僕はその飯島の横顔を見つめ、本当に楽しそうにしていることに安心して、微笑む。
「………んじゃ、次は水風船かな〜。」
その僕のつぶやきに飯島は金魚の袋から顔を上げてまた目を輝かせる。
「ほんと?」
「うん。でも僕はスーパーボールもやりたいんだよね〜。」
「あ、それもいいかも。」
「でしょ?それに僕屋台でいっぱい食べるって決めてたから夕飯抜いてきたんだよね。なんか食べたい。」
「ん〜お祭りと言えば…タコ焼き?」
「お?わかってるね!」
「あはは、じゃあタコ焼きの屋台も探そうね。」
「うん。」
そんなことを話しながら、僕たちは屋台の立ち並ぶ通りを進んで行った。


