何も言う気配のない俺に痺れを切らしたのか、宮田がやっと漫画から顔を上げて俺を見て顔をしかめる。
「呼んでおいて無視とはなにごとじゃ。」
右手に漫画を持ったまま腕組みをして頬を膨らます宮田は、一見いつもどおりの宮田に見える。
いや、いつもどおりに見せている。
俺は体勢を変えることなく、口だけを開いた。
「なんなの?」
あまりにも意味のわからない言葉に、わけがわからないといった様子で宮田が俺を見る。
だが、知ったこっちゃなかった。
「なんなの?」
「え?」
「なんなんですか。」
「何とは……なんですか?」
「何に落ち込んでんのかって聞いてんの。」
俺の言葉に宮田は大きな瞳を少し見開いて、それから少しうつむき気味に小さく言う。
「落ち込んでなんか………」
「何年の付き合いだと思ってんだよ。わかんないと思った?なめてんの?」
「な、なめてなんか…!」
「それで?」
それについにうつむいてしまう宮田にため息をついて、俺はベッドから降りて宮田の前に座り直す。
さっきよりも口調を和らげて、うつむく宮田の顔をのぞきこむようにして見た。
「それで?何があった?」
宮田は前髪の隙間から俺を見上げると、足を持ち上げて体操座りをして膝にあごを載せる。
「当ててみそ。」
「ふざけんな。」
「あはは。」
宮田のでこを軽くひっぱたくと、宮田は弱々しい笑い声をあげてまたうつむく。
俺はもう何も言わずに、ただ宮田を見つめて次の言葉を待った。
「……………うまくいかないな〜と、思ってさ。」
うつむいて、気を紛らすように体を横にゆっくり揺らしながら言う宮田に、俺は口調をなるべくいつものようにして答える。
「何がよ?」
「……いろいろ。」
「ふーん。いろいろ?」
「いろいろ。」
俺は宮田の横に置かれた漫画を手にとってぱらぱらとめくりながら、顔を上げずに言う。
「そりゃ落ち込むわな。」
「うん……。」
「でも俺はさ、絶対無理、ってなるまでは諦めない。」
「………。」
「諦めなかったから、うまくいくことばっかだと思うんだよね。世の中はさ。」
「…………深イイね。」
「1万。」
「あげないよ〜。」
また弱く笑う宮田に、俺は漫画から顔を上げて宮田の頭をわしわしと撫でる。


