「え、いない?」

バスの出発時刻まであと1分。

そんなか、花音が真っ青な顔で言った。

「未来が・・いないの・・っッ」

大きな瞳に涙をいっぱいためて。

「零サマぁ・・・助けてッ」

泣きすがるように俺の手をつかみ、ぎゅぅっと握った。

「ケータイは?」

「鞄の中の物・・全部置いてっちゃったから・・・・・。」

はぁぁー

何やってんだよ、未来のやつ。

「そろそろ出発で~す。皆さん、シートベルトをはめてください。」

狭いバスの中で、バスガイドの放送が流れる。

「・・・っッ。」

いけるわけが、ない。

あんなに拒否られてるっていうのに・・


そんな思いと裏腹に。

裏切り者の足は、動き出していた―――――――――――――――