「みく、みーく。」

さっきから何度も名前を呼んでいるが、一向に気づきそうにもない。

ぽんっと頭を軽くたたくと、はっと顔をあげた。

「未来、たれてる。」

未来が手に持っていたペットボトルからぽたぽたと落ちるお茶。

中身が少なかったのが不幸中の幸い。

「・・へっ!?」

やっと、漏れていたのに気がついた。

「わっ」

ポケットからティッシュを取り出し、一生懸命拭きはじめる。

「これ、着とけよ。」

自分の来ていたジャケットを脱ぎ、未来にかぶせた。

「・・え?」

ぽかーんと口を開け、渡したジャケットを抱く。

「だっだって・・零は・・?」

なんだよ。

自分がそんな状態なのに、俺の心配かよ?

「いいから。」




何も、言わない未来。



信用、されてないってことか・・?



いつとなく弱気な自分に、腹が立ってくることを通り越して。

ただ、情けなかった。