「今から5分間でむいてくださーい、じゃあ、スタート!!」
技家の先生がそういうと、みんな一斉にリンゴを洗い始める。
洗う・・ところまではできるんだけどなぁ・・
あれから、なんども練習したが、結局最後までむけることは一回もなかった。
一番いい記録で、32分08秒。
5分とか・・
無理に決まってるじゃん!?
むく早さ以外に、リンゴの皮の薄さ、形の正確さを見られるらしい。
だけど今のあたしにとってはすべて劣っていて・・
シャキシャキッ
リンゴをむく、爽やかな音が隣から聞こえてくる。
ただ、包丁をもって固まっているだけ。
未だにばんそうこうだらけの右手と左手。
「牧野さん!!早く始めなさい。」
ぽんぽんっと背中をたたかれて、軽くにらまれた。
「はい・・。」
そう応え、リンゴを持ったはいいけど・・
その瞬間だった――――――――

