「……あの、もしかしてだけど、僕が起きるまでずっと待ってた?」


そんなわけないよな、と思いつつも訪ねてみたが、案外僕の予想は当たっていたらしい。


「あぁ、待っていた」


魁は何もないかのように素直な答えを僕にくれた。


「何分ぐらい?」


恐々魁に聞いてみる。


「3時間ぐら…」「さ、3時間も?!」


僕は魁が最後まで話す前に言葉を被せてしまった。


声が裏返ってしまった………だってあまりにも突拍子すぎて………分じゃないし、時間だしっっ


心の中で突っ込みつつ、玄関においてある時計を見ると、約束の時間をとうに過ぎていた。


「どうして起こさなかったの?!」


ついつい声が大きくなってしまう。


それでも魁は平然と答えた。


「ぐっすり眠っていたから、寝言も言っていたし」


ね、寝言ぉ~?


最悪だ。


遅刻した挙げ句に、魁に寝言聞かれるなんて。


顔が熱い、というより身体中だ。

とろけそう。


「何の夢見てたんだ?」と魁は首をかしげ、挙動不審になっている僕に質問を投げかけてきた。


なぜ夢のことを聞くのかわからなかったけど、笑われないように、わかりやすく話した。


「ええっと……、5年前、僕が初めて魁にあったときの夢だった。魁が僕の手の甲に暴走しないための封印を施してくれた時のだよ」


僕は全てを話した。


隠し事は嫌いだから。


女の人が僕に話しかけてくることも、その人が、神の子とかシグナルナンバーとか言っていることも。


「あとは…」


僕は顔を上げ、不意に魁の顔を見たときだった。

魁の表情がいつになく厳しくなっていることに気がついた。


口はきつく結ばれ、眉が寄せられている。


いつも穏やかな魁とは思えないほどの厳しい顔だった。


「魁?どうしたの?」


さっきまでの笑顔が途端に消えたことに不安を覚え、下から魁の顔を覗きこみ声をかける。


「魁?」


そろりと魁の手に触れ握る。


いつも僕が不安なとき魁がしてくれるように。


すると魁はハッとするように顔をあげ、そして僕を見る。


「れ…ん」


「どうしたの?何かあったの?」


僕は訪ねたけど魁は首をふって「何もない」と一言いい、僕の手を握り返した。