静まった広場に佇む、真っ暗な夜の教会。


大きな扉を両手で押し退け、瞳に写るのはキリストの像まで続く深紅のカーペットや、青や赤や緑といった彩りどりのステンドグラスが月光を通して写し出されている風景だ。


壁には聖母マリアや天使が描かれており、その幻想的な空間の中を、一人の少年が震えて今にも泣き出しそうな顔でキリストへ向かっていた。


そして崩れ落ちるように膝をつきぽつぽつと言葉を発していく。


「神様、僕はどうしたら普通の人のように生きて行けるの?あなたはどうして僕にこんな力を与えたの?」


少年の声はしだいに強みを増し、大きくなっていく。


「人を傷つけることしか出来ない力なんて、僕はいらない。僕は……僕は皆を守りたいだけなんだ!それなのに…それなのに!」


少年の嘆きは怒りをも含んでいた。


なぜなら、神を恨んでいたから。

人とは思えない力を神に与えられ、そのせいで人に嫌われてきたから。


水を操れたり、火が勝手に出てきたり、押さえられない気持ちがあるとまわりの物を壊してしまう。


今まで仲良くしていた友人でも、この力を見ると「化け物!!」という言葉を残して、去っていったのだった。


少年はうつむき自分の服を強く握り締めた。