銀色の長い髪と黒色のコートを翻しながら、真夜中の街を少女は走る。


本能は「止まるなと」頭のなかで警鐘を打ち続け、少女は足を止めずただ走り続けた。


背後に迫り来る闇の中には無数に散らばる光と、確かに伸ばされた骨ばった手。


人間のモノではない確かなものに、嫌悪感がわき出てくる。


(いやっ!)


必死に走るが、少女は恐怖に体を絡め捕られ上手く動けず、徐々に闇との間合いが縮まっていく。


(もう…………ダメかな………)

そう諦めかけた時だった。


「よく頑張ったな」


何かとのすれ違い様に聞こえた男の人の声。


聞き間違えるはずがない、聞きなれたその声は冷たくも彼なりの優しさが混じっていた。


少女は足を止め後ろを振り返る。


「魁っっ!!」


魁と呼ばれた人物は、少女に微笑み前を見据えると、背中に背負われた大きな剣を抜き取り片手で構え、向かってくる闇を切り裂いた。