「違うね」

マスター自ら運んで来た、香り高いブレンドを台無しにした只の甘ったるい黒いお湯を、満は一気に飲み干す。

「龍太郎は見過ごせない性格なのさ。そりゃあ人助けなんて自覚はないのかもしれない。けど、お前は見過ごすと、ずっと尾を引くタイプなのさ。『あの時ああすれば、もしかしたら助けてやれたんじゃないか』って…自分の事でもないのに後悔する…損な性格なんだよ、お前は」

「……」

無言のまま、龍太郎もまたブレンドを口にする。

甘すぎる筈のブレンドが、やけに苦く感じられた。