「どうぞ」

迷いなく洋館の敷地内に入り、龍太郎を招き入れる天音。

適度に人の手の入った洋館は、廃墟というほどには荒れていないものの、どことなく生活感を感じさせない。

住人が無機質さを感じさせる天音なのも、その一因か。

鍵を開け、重厚な扉を開けると、重苦しくも低い音が響いた。

「っ…」

龍太郎は息を呑む。

夕暮れとはいえ、もう春だ。

制服の上着を着ていると、時折汗ばむくらいの陽気となる事もある。

というのに、何だろう…この洋館内から漂う冷気は…。