そうこう言っているうちに。

「お」

前を歩いていた天音が立ち止まる。

「着いた」

顔を上げる天音。

目の前には急な登り坂があり、その坂の途中に、古びた洋館が聳え立っていた。

元は白塗りの壁だったのであろう、洋館の外壁は蔦が全面に絡みつき、風雨に晒されて老朽化している。

外から見える窓という窓はカーテンで遮られ、中の様子は窺う事が出来ない。

如何にも…というか何というか…。

(ああ、畜生…)

龍太郎は額に手を当てる。

(ここ…雛菊の奴が前に言ってた、幽霊が出るって噂の洋館だ…)