傷跡

これは、マズイ。
人間違いにも程がある。


「歩け。」


私をどこかしらへ連れて行こうとする誰か。
こういう時、どうすれば―…


――ひゅっ


何かが風を切る音がした。
何かとは何か、と考える暇もなく、後ろから何かと何かが当たる鈍い男と「うがっ」といううめき声が聞こえた。
鋭い刃をもつナイフは地面に落ち、誰かは私を自由にした。

私の体を自由にした誰かは地に膝をつき、後頭部を抑えている。
その誰かの手はみるみる内に真っ赤に染まり、その赤は地面までも赤く染めていく。
誰かの足元には少し大きめの石が一つ落ちていて、見るとその石にも赤が付いていた。


「よっしゃ、当たった！」

「ナイス石。」


と、二人の男の人の声が聞こえた。


「………」


後頭部から血を流した仮面を付けた誰かは、その男二人を一瞥すると足元に落としてしまったナイフを拾おうとする


「やっべ！！」
「！！――」