傷跡

「さすが城之内の娘…よく気が付いた。だが遅い。」


……え？

混乱する頭で必死に考える。
城之内の娘…？私の今の名字は山崎。昔、父親と母親が離婚する前の名字は中谷。
城之内…？の娘……？
まずは、冷静にならないと。
ああ、人間違いね。

一瞬で思考する。


「あの、人間違いもごっ」
「大人しく人質になってもらう。さもないと殺す。」


全て言い終わる前に私は口を抑えられた。
誰かが左手で私の口を抑えたので右頬にナイフが当たりそうになる。

左利き

冷静に頭の中に刻み込んだ。


私を抑えている誰かの顔を見ようと、そっと振り向く。


「―…！？」


その誰かは帽子を深く被り、表情は読めない。
…いや、わからない。

なぜならその誰かは顔全体が隠れるくらいの大きな仮面を付けているから。

身長は私と頭一つ分程高いので180㎝くらい。
首から少し見える黒色の髪の毛はあまり長くない。
声が低いことも合わせてこの誰かは多分男。