二人して起きる気配、なし。


「……ゅぅ…」


愛子さんがまた寝言を言った。
『ゆう』?『優』…?鈴村さんの事かな…?
愛子さんは眉間にしわを寄せ、数回『ゆう』と呟く。

私はまだ、愛子さんの寝言の意味を、知らない。


しばらくして、目覚めた愛子さんの第一声は、


「あ、空さん。おはようございます。昨夜は寝付けなかったので、ルナも一緒に空さんのお部屋にお邪魔しました。」


なぜ?!鍵はちゃんと内側から閉めたはずなのに…


「鍵は、うふふ。ちょっと、ね。」


愛子さんは私の心を読んだようにそう言った。…ちょっとねって……。


「それよりも朝食よ。ルナ、行くわよ。」

「はぁい。」


眠そうなルナちゃんと愛子さんは私の部屋から出て行った。
城之内家では、朝・晩は家族みんな揃って食事をとるらしい。
私もどうかって誘われたけど、きっと慣れない食器や空間だろうから自室で頂きます、と断った。