「いいえ。それよりどうかしたんですか?」

「あ…えっと……」


メイドさんは言いにくそうに口ごもる。
明らかに何かあったようでみんなキョロキョロしながら走り回っている。
…丸で何かを探すように
するとメイドさんが遠慮がちに話してくれた。


「実は……このお屋敷の愛子お嬢様がお屋敷内で失踪なさったようで…。」

「失踪?!」


お嬢様が失踪!?まさか暗殺者が屋敷内に忍び込んで…?!
私が有らぬことを想像していると、メイドさんが苦笑いを浮かべながら続ける。


「恥ずかしながら、愛子お嬢様の失踪は度々起こることなので…。空さんがお考えになっているようなことはありませんよ。」


ああ、それはよかった。いや、あまりよくないけど。
屋敷を失踪って…。一体、愛子お嬢様ってどんな人なのだろう…。

私はメイドさんに会釈をしてトイレに向かった。

共同トイレは予想通り…予想以上にきれいで、個室が四つある。洗面台にはティッシュペーパーや麺棒、剃刀まで置いてあり、小さな棚の中には女性用のナプキンまで入っていた。