「こちらのお部屋をご利用下さい。」


城之内社長との会話の後、私はメイドさんに部屋に案内された。


「お手洗いはお部屋を出て向かって右、突き当たりの角を左へすぐです。お部屋の中にある物は自由にご使用下さい。」


部屋の簡単な説明がされる。広い部屋は私一人が使うのにはもったいないくらいきれいで物もホテル以上に整っている。


「何かご不便がございましたらこちらの専用電話でご連絡下さい。」


専用…私が住むことになった部屋には電話…インターホンのようなものがついている。この部屋に住んでいて、果たして不便なことがあるのだろうか…。


「あの、一度家に戻って荷物取りに行きたいんですが。」

「お荷物、ですか?」


私は思い出した事を聞く。住むことになったのは良いけど、制服の替えも私服も化粧水、充電器全て家にあるし…。
教科書は学校に置いてあるけど。


「ご自宅にお戻りになる必要ないと思いますよ。空さんに必要だと思われる物は全てこちらのお部屋にございます。それでは。」


そう言うとメイドさんは微笑みながら部屋を後にした。