抱きしめられた瞬間全部わかっちゃった。
迎えにこれなかった理由も、
帰りが遅くなった理由も。
すごい甘くていい香りなのに
私の涙を誘う匂い。
良ちゃんの爽やかな石鹸の香りとは
対称的な匂い。
『これ、すごくいい匂い。
けど、私たちには高くて買えないね』って
美奈と買うのを諦めた女性ものの香水の匂い。
抱きしめて貰えるのは良ちゃんの
ただの妹だから。
わかってた、わかってたけど、
再確認したくなかったよ。
抱きしめられるこんなに嬉しい
ことなんてめったにないのに
抱きしめるその腕がすごく嫌だと思うのは
わたしのわがまま。
