春の記憶

それから私は雄大と
梨乃に体育大会のときに私が
見たものをすべて話した。

「流依が…そんな事・・。」

梨乃は言葉を失い、

「俺は、あいつはそんな奴
 じゃないと思う。」

雄大は私を励ますように
言うと同時に、自分自身にも
言い聞かせているようで…。

こんな話をしていても
流依は私たちのところには
来ないで、ずっと千紗ちゃんと
話していた。

「あず、ちゃんと話したほうが
 いいんじゃない?」

梨乃は私に遠慮がちに
そう言った。
私と、流依のために言ってくれた。

「だけど…。」

だけど、もし『別れよう』なんて
言われたら?
『あれは誤解だ』なんて言い訳されて
千紗ちゃんとキスした、あの唇に
何事もなかったかのように
私はまたキスを出来る?
私にそんな事が出来るの?

「俺も、話した方がいいと思う。
 あずが納得する事情があったんかも
 しれん。信じようや」

雄大にも梨乃と同じことを
言われた私。

どんなことを言われても
キスをしていたことに
変わりはなくて…。
それでも私が納得する言葉を
流依はくれますか?

「分かった。
 今日の帰り、話してみる」

不安で不安で潰れそうになる。


流依は学校で私に話してこなかった。
休憩時間はずっと
千紗ちゃんと話していた。
私は、流依の彼女なのに
ずっと二人の姿を遠くで
見ていることしかできなかった。