眠れる森の歌い姫


「ただいま。」

森の丁度真ん中に位置しているらしい大きな泉
その泉に、まるで温泉にでも入っているように浸かっている大樹

その大樹が私のお家
もう少し詳しく言えば、その大樹の枝の部分に建てられたお家が私の住まい

外の世界では、ツリーハウスと言うんだと彼が教えてくれた

「遅い…何時間も一体どこをほっつき歩いていたんだ??」

彼は大分怒っているようで、声のトーンがいつもより低い
普段なら決まって、「おかえり」と必ず言ってくれるのに…

腕を組み、恐い顔で此方を見る彼に、とても心配を掛けてしまったのだと罪悪感が込み上げてくる。

「本当にごめんなさい…
気づいたら眠ってしまっていたみたいで…」

涙ぐみ頭を下げる
すると…彼が近付いて、クシャッと私の頭を撫でた

「嫌…そんな顔をするな…;
少し心配しただけだ
何もないのなら良かったよ」

そっと顔を上げると、優しく微笑んでくれて…
先程とは違ういつもの彼に安心して、私も頬が緩む

「でも…これからは気をつけること
何か合ってからじゃ遅いんだから」

そう言って、私の頬を優しく抓る

「は…はぃ//」

私は、こんな些細なやり取りがとても大好きだ