『うあぁぁん!!うあぁぁーぁぁーーッ!!』

『幸姫、如何した!?何故泣いておられる!』

『ひっく…うぅー……』

『落ち着かれよ、ゆっくりで構いませぬ。この霧助に話して下さらぬか?』

『うっ、うっ…どうして、あにうえは…オニよばわりされるのじゃ?』

『幸姫…』

『おまえのあにうえは、オニじゃ!オニのいもーとは、オニガシマにかえれ!…みながあにうえをぐろうするのじゃぁー!うあぁぁん!!』

『…嗚呼、幸姫…我等の可愛い姫君よ、どうかその愛くるしい目元を、これ以上大粒の涙で腫らさないで下され。幸姫がそのような輩に虐げられ泣き寝入りをしていた事に気付かぬとは、拙者、一生の不覚でござる』

『うっ、うっ…』

『幸姫、我等の姫君…泣かないで下され。どうか、拙者を苛めないで下され。貴女が一粒の涙を落とす度に、拙者は心の臓が痛く苦しくなりまする』

『グスッ…うん、もう…なかないよ…』

『おぉ、それでこそ我等の姫君!お強い、心優しき姫君!ご褒美に、次の任務で幸姫に似合う花を用意致しまする』

『まことか!?』

『約束致そう、必ずや幸姫のお気に召す花を見付けてくるでござるよ』

『うむっ!約束じゃ!』





――――…約束……。


「…!!」


慌てて起き上がった。

何と…夢であったか…。
何とも懐かしい夢であったな…幸姫の幼き頃の夢とは…。
あの頃は愛らしかった…夏の頃の話だったか…?


「…戦を目前にして、なんたる様だ…」


頭をかきながら、再び寝床についた。

闇夜に浮かぶ三日月が、美しくも儚い…。
この戦、負ける訳には決してゆかぬ。

三日月に、拙者は宣誓致した。