昔、若い村娘と少年がいた。

少年は仕事の都合で村の付近へ訪れ、兄弟と野宿していた。

ある日、村の娘が少年に握り飯を贈り"しっかり食べないと" と気遣った。

少年は村娘の優しさと愛らしさに惹かれ、恋に落ちる。

娘と少年はいつも隠れては仲良く対談していた。


そんなある日のこと…娘がある男に惚れている事を少年に伝えた。

少年は悲しんだ、恋に敗れたのだ。

他人ならまだしも、その男が己の兄であることに、少年は絶望を感じた。

しかし、少年は悲しみを隠し、娘の恋を応援した。

娘が幸せなら、それでもいいと思えたのだ。


幾日か経って、娘が少年の兄に想いを告げた。

しかし、その想いは届くことなく…少年の兄は娘の告白を断った。


"俺には貴女を守る事は出来ない"


娘は酷く落ち込み泣きわめいた。

少年は胸が張り裂ける思いでその様を見ていた。


ある日、ついに村の付近から発つ事になった。

少年は最後に娘へ想いを告げようと決心し、村へ向かう。


…娘は、首を吊って死んでいた。


嘆く村人に囲まれ、ひっそりと…。

少年の優しい心に、恨みと憎しみが宿った。

その矛先は…娘をふった、己の兄へと向けられた。


娘が死んだのは、兄のせいだ。
兄を殺して、敵を討つ。


少年はそれから、己の兄を執拗に殺そうと試みた。

しかし、力量は兄の方が断然上…このままでは敵わない。


少年は、兄弟と別れ己を磨いた。

いつの日か、兄の首を獲る為に…。