「幸、どうだ?そこにはあったか?」
「…ううん、見付かんない…。もっと奥に行けば…」

「お、おい…幸、あまり沖の方には…」
「大丈夫!着替えはちゃんと持ってきてるから!」

「違う、そういう事じゃなく…波が強くなりつつあるからあまり奥へ向かうと…」

「もう、兄上は心配性なんだか…キャッ!?」
「幸ィ!!」

「…!幸姫…!?」


拙者の遥か先の海…沖の付近で幸姫が波に飲まれた…!!

いかぬ!早く助けねば…!!


「幸ひ……っ!!」


助けに向かおうとした拙者の足が、波打ち際で止まる。

彷彿と浮かぶ…あの日の、出来事…。



『ゲボッガッ、ガボッ…あ、ぐ…あにぅ…!!』

『霧助!! 長、無茶です!! 霧助はろくに柔軟もせずにいたのですよ!?』

『あぐぁ…ガハッ!! お、おざぁ…!! だずげ…ぉえ!!』

『きりすけのあにじゃあ!! うのまるのあにじゃ、きりすけのあにじゃがおぼれちゃうよぉ!! 』

『くっ…!待ってろ霧助!! 今助けてやる!!』

『ならぬ!貴様達は幾多の試練を乗り越えここまで這い上がってきた…このような試練もこなせぬ者等、忍として失格!…死、あるのみだ』

『そんな…大事な俺の弟なんですッ!!』

『ガボッ!! ぁうえ…ざ、ざめ…ぐ、ゲボッ!!』

『うのまるのあにじゃあ!! サメが…サメがぁ!!』

『霧助!! くっ!』

『待て!! 雨之丸!!』




―――…苦しい…塩辛い…体が、重い……食べられる…!




『霧助!!』




―――…兄上…晴之助……。