「なので拙者は屋敷へ帰りまする~!!」

「霧助!帰っちゃやだ!」
「頼む霧助、海に入らなくても良いから、付いてきてくれ」

「うっ…ぐぅ…!」

「霧助お願い…!」
「霧助…駄目か?」

「…~~~っ、あーもう、わかったでござる!! お供致しまする!」

「やったぁ!!」


「ただし!拙者は絶対に海には入りませぬぞ!?」

「「わかった」」




このように約束し、拙者はお二人と西の海へ参った。

浅瀬で遊ぶ政幸殿と幸姫…拙者は、海岸でその様子を見守る。



「組頭、まさか貴方が泳げないとは…」
「可愛い所あるんですね、そんな欠点があるなんて…」
「あの博識器用で完璧な組頭が、まさか海が嫌い等…」

「えぇい!! 黙らぬか御主達!!」



ハハハハと笑いながら去って行く、拙者の忍隊。

拙者が追い掛けようと腰を上げると、奴等は海の浅瀬に腕を組んで立っておる。

踏み出そうと出した右足が、止まった。



「組頭、どうされました?」
「我々はここにいますよ」
「得意のお仕置きはしないのですか?」

「ぐっ…おのれぇ……御主達!! 屋敷へ戻ったら只では済まさぬぞ!!」

「ヤバイな、組頭がキレている」
「帰りにくいな、これは…」
「組頭のお仕置きはきっついからなぁ…」



人が泳げぬからといって調子に乗りおって…!

屋敷でどうなるか、覚えておれ…!



「組頭、我々は別に組頭の悪口を言ってはおりません」
「可愛いと評しただけですよ」
「組頭ってば可愛い~!!」

「それが無礼と申すのだ!! 御主等絶対に許さぬぞ!!」

「ちょ、クナイ投げないで下さい組頭!!」
「しまった!飛び道具では敵わない!」
「っていうか、いくつクナイ隠し持ってんだ!? 投げすぎだろ!!」


拙者は逃げ惑う部下に、ありったけのクナイを投げた。