「霧助!出掛けるよ!」
「は?…何でござるか、唐突に…」



忍具をまとめていると、幸姫と政幸殿が拙者の部屋へ訪れた。

作業を中断させ、お二人に向き直る。



「これから幸と西の方へ行く、お前も一緒に来ないか?」
「拙者はお二人の護衛も兼ねておりまするよ、無論お付き合い致しまする」

「やったぁ!早く行こう!」



はしゃぐ幸姫と、嬉しそうに微笑む政幸殿。

拙者も急ぎ身支度を整え、屋敷を出た。



久々の城下町…相変わらず賑やかでござるな。

政幸殿と幸姫は手を繋がれ、拙者の前を歩む。


拙者の背後には、ひっそりと部下を忍ばせた。

何かあってはいかぬ。
すぐに対応出来る状態を保たねば。



「幸、はしゃぐと転ぶぞ」
「だって~楽しみなんだもん!」

「ところで政幸殿、西の方へ参ると申されたが…一体どこへ……、…ぬ?」


「…どうした、霧助」
「霧助?急に止まって…どうしたの?」

「……………」



この、臭いは…この風の臭いは……。


……ま、まさか…?



「……潮の…臭いが致す」

「よくわかったな、霧助」
「これから海に行くんだよ♪」

「うっ、う…う…う、ううううみィィィィッ!!!?」



拙者の叫び声が、城下町に響き渡った。