あの姫は一体どこへ行ってしまわれたのだ!


拙者は屋敷中を探し回った。

もしや座敷に戻っておるのでは?

盛り上がりをみせている座敷にいるとは思えぬが、有り得ぬ話ではない。


拙者は宴が行われている座敷へ向かった。



「…だからあんたはお子ちゃまなのよ!!」

「…!! あの声は…晁子殿…?」


やはり座敷にいたのか?

障子を開き、中を確認致した。


「何事でござッ……る………」


思わず…絶句。
それほどまでに、拙者はその光景に目を疑ったのだ。


「謝ってよおぉ!! 霧助の事バカにしたこと、謝ってよおぉぉ!!」
「なんであたしが謝んなきゃいけないのよおぉぉッ!!」

「幸、止さないか!!」
「晁子、いい加減にしろ!!」


幸姫と晁子殿が、お互いの髪の毛を引っ張りあい肌を引っ掻いていた。

政幸殿と晁子殿の兄君は、必死に二人を引き離そうとして着物を引っ張る。


「うぅぅ~ッ!! 絶対に許さないんだからぁ~!!」
「こっちの台詞よ!! っ、離しなさいよ、キャーッ!いた~い!!!」

「八郎!そっちを頼む!!」
「あぁ、政幸は二人の間に…」

「私の兄上をとろうとするし、霧助もバカにするし、やっぱりあんたなんか大嫌い!!」
「あたしだって、あんたなんか大嫌いよ!!」


間に入った政幸殿は、どちらとも言えぬ爪に引っ掻かれ、頬に傷を負った。

「…ッ!!」

しかし、それをものともせずに、政幸殿は二人を引き離す。

晁子殿の兄君、八郎殿はご自分の妹君を勢いよく引っ張った。


ようやく引き剥がされた二人であったが、未だに口論をしている。



「………………」



拙者は、ゆっくりと座敷の中へ入った。