「今夜は無礼講だ、皆、楽しんでくれ!」

「「「おおおぉぉーッ!!」」」

「…霧助のバーカ!」
「無礼過ぎるでござるよ幸姫!!」


政幸殿の後ろで控えていた拙者に、舌を出してみせる幸姫。


屋敷の者達と、峯本家の者達が、酒や料理を楽しむ。

峯本家の当主は政幸殿と仲良く酒を飲まれておるな。


さて、問題の幸姫は……。



「なにおぉう!? あんたなんかに負けないんらからぁ!!」
「ふん、お子ちゃま姫がよく言うわ」

「ゆ、幸姫!! お酒を飲まれたのでござるか!?」


これはいかん、早く引き出さねば取っ組み合いになりかねぬ。

拙者は猛抗議する幸姫を晁子殿から引き剥がし、座敷から連れ出した。



「何らのよ…あいつぅ……人の事お子ちゃまらって…」

「幸姫、酒はあれほど飲むなと申したのに…」

「きりすけぇ~無礼講らよ~」
「無礼講でも限度が…あーもうくさっ、お酒臭いでござるよ!」


呂律の回らぬ幸姫をなんとか部屋まで運び、壁に寄り掛からせた。

急いで布団を用意し、幸姫をそこに寝かせる。


「きりすけぇ~ろこに行く~」
「お水を取りに台所用へ…」

「らめらよ~離れちゃらめぇ~」
「あーもう!拙者の忍装束を引っ張らないで下され!!」


伸びてしまいまする、と幸姫をなんとか引き剥がす。

拙者は台所用まで走り、水をくんで参った。


静かになった幸姫の部屋の前で膝まずき、失礼致すと入る。


「…幸姫?」


しかしそこに、幸姫の姿はなかった。